「パティシエ エス コヤマ」残業342時間!やりがい搾取経営がヤバい!

「小山ロール」で知られる兵庫県三田市の人気洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」が違法な時間外労働時間で書類送検されたという報道がありました。

2019年に働き方改革法案が施行されて以降、重要な経営課題として認知されてきてはいるものの、長時間労働の問題はいまだに絶えません。

「パティシエ エス コヤマ」は受賞歴もある超人気洋菓子店。

オーナーシェフの小山進さんは、フランスのショコラコンクールで8年連続最高位を獲得。また、「世界のトップ・オブ・トップ・ショコラティエ100」のうちの一人として認定されるなど、日本を代表するパティシエ・ショコラティエであります。

そして「パティシエ エス コヤマ」の代表的な商品が「小山ロール」。テレビチャンピオンで1位を獲得したことで一気に有名になりました。

私は兵庫県在住の人間。知人が三田市に行く事があれば買ってきてもらったりするほど私も「小山ロール」の大ファン。

まさかこの「小山ロール」の裏でこの様な問題が常態化していたとは知らず、今回の報道を知って驚いている次第であります。

今回は、人気洋菓子店で起きた問題から労働について考えていきたいと思います。

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残業342時間も!「パティシエ エス コヤマ」のブラックな労働環境

労働基準法違反などの疑いで書類送検されたのは、兵庫県三田市に本社がある法人「パティシエ・エス・コヤマ」と、製造と経営部門の男性幹部2人。

ロールケーキなどの製造を担う「製造一課」の社員11人に対し、労使協定(三六協定)で定めた上限を超えて、違法な時間外労働をさせた疑いとの事。

労基署によると、1か月間で最大341時間58分の時間外労働などをしていた期間のある社員もいたとか…

 1か月で約342時間というと1日あたり平均11時間以上残業、おそらく1日19時間ほど仕事をしていた事になる…。

たまの1日がそうだったらまだしも、1か月間、この状態で働いていたと想像するとゾッとする数字であります。

「過労死ライン」とされる月100時間どころではありません。「果たしてこの社員は家に帰っていたんだろうか?」と疑ってしまう労働時間です。

いくら何でも異常な労働時間。
社員はどう感じていたのか?

転職サイトでの口コミを見てみますと…

  • ワークライフバランスなんて微塵も感じられない、程遠い言葉。(2020年の口コミ)
  • 休日日数は部署によって違う。部署長によって違う。(2018年の口コミ)
  • GWやお盆は13連勤ほど。交代制もありません。しかし営業は自由に休んでいます。(2017年の口コミ)

などの口コミがありました。

いずれもすでに退職した社員の口コミでしたが、同社に対してあまり良い印象で働いてはいなかったと伺える口コミであります。

過酷な労働環境であることが伺えますが、営業は比較的休みが取れてそうですし、部署によっても環境が違うようでね。

今回の書類送検でもロールケーキなどの製造を担う「製造一課」の社員の長時間労働が問題になっていたとの報道からすると製造部門の労働環境が特に過酷なのが伺えます。

「パティシエ エス コヤマ」は過去に伊丹労働基準監督署から2度にわたり、是正勧告を受けていたことがあります。

1回目が2018年1月。社員55人に100時間以上のか時間外労働をさせていました。残業が月161時間に上った人もいたといいます。しかし改善せず、2021年の1月に48人に対する時間外労働で2度目の勧告を受けました。

そして今回の書類送検。 

環境はなかなか改善されず社員はブラックな長時間労働を強いられていたことは否めません。

ケーキ作りと人間づくりを目指した経営

2018年2月に日経ビジネスの記事でスタッフが生き生きと働くケーキ屋」という題名で「パティシエ エス コヤマ」について取り上げられていました。

そこでは同社の代表の小山シェフに色々とインタビューされております。

記事を読んで、「ケーキ作りと一緒に人間づくり」という理念のもと、経営をされているという印象でした。

スタッフが堂々と誇りをもって働いていることが重要です。そんな先輩たちを見て、ここの一員として同じ舞台に立ちたいと思ってもらえるかどうか。だから、僕は社員にはいつも「人気のある人になろう」と伝えています。「お菓子も作るけど、自分も作ろうね。すてきな自分になろうよ」と言っています。

引用元:日経ビジネス

小山シェフは、人づくりを大切にしています。ですから教育にとても力を入れているようです。

新人が入ったら基本的な教育、姿勢やコミュニケーション能力といったことだけでなく、味覚も小山シェフがおいしいと思うものとのズレが多く、味覚から修正しなければなりませんと語っていました。

気になるところは細かく注意し、社員が苦手なことをクリアして自信がつくまで一緒にやりたい。それがエス コヤマの基本姿勢との事。

それから社員を褒めるという事を徹底していました。褒める時はみんなの前で思い切り褒めるとの事。褒められた瞬間にうれしくて泣く社員もいたとか…

表彰制度も設けられていたようですね。

僕は世界のショコラの賞を受賞しました。社員たちにも賞をあげたいなと思って、「エス コヤマ アワード」と称して、いま30個ほどの賞を作っています。「新人賞」や「努力賞」といったものから、「必殺指摘人賞」「思慮深く貢献できたで賞」「協調性と責任が芽生えてきたで賞」などといった賞もあります。

引用元:日経ビジネス

取引業者も含めて300人くらい集めてで表彰式を行なっていました。

また、1年間みんなで頑張って、いい結果が出たら、カカオの産地に研修旅行に行くとの事。エス コヤマで働いたら海外に行ける、というのも一つの魅力になる、他のケーキ屋とは違う体験ができることを誇りに思ってくれたらそれが接客にもお菓子の味にも表れるのではないかとも語っていました。

こうして見てみると、とても高い志のもと、社員教育にも力を入れ経営されているという印象です。

ただ、小山シェフの熱い思いが一方通行であってはならない。社員と目的やビジョンを共有して、同じ方向を向いていることも大切でしょう。

そこが実際どうだったのか?

ちょっと信じられない報道もありました。

「パティシエ エス コヤマ」の広報室の発表によると、2021年1月に是正勧告を受けた際、「代表の小山シェフは当初、是正勧告を受けたことを知らなかった」というのです。

労働についての是正勧告を企業の代表が知らないなんてあり得ません。

同社によると、2018年1月に勧告を受けた際、当時の管理本部の部長が対応し、「部長が是正報告書に小山の印鑑を押して労基署に提出したとみられる」と説明しています。部長は19年に退職しており、勧告の事実は他の社員も知らなかったという…

全くもって報告、連絡が出来ていない。しかも労働に関する是正勧告であります。企業として向き合っていかなければならない重大な問題が報告されなかった…

トップダウンが激しく、小山シェフに報告しづらい環境だったのか、単に当時の部長の怠慢だったのかは分かりませんが、風通しの良い会社とは言えません。

小山シェフと社員との間に大きな溝がないと良いのですが…。

ちなみに、このインタビュー記事では小山シェフは社員の離職率は10%前後と答えていました。

このたびの長時間労働の問題につきましては、訴訟問題などには発展していないようですが、このままの状態が続いていれば、社員のうつ病の発生や最悪の場合は過労死にまでつながる危険性もあります。

過去には洋菓子メーカー「ゴンチャロフ製菓」(神戸市灘区)の社員がパワハラや長時間労働の末に自殺した問題も記憶に新しいです。

その社員は上司から暴言や大声の叱責を繰り返し受け、16年に亡くなっています。パワハラや月100時間を超える残業で陥ったうつ状態が原因とされ、西宮労働基準監督署が18年に労災認定しました。

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過酷な違法残業は「やりがい搾取」

一連の報道を見ていると、この「パティシエ エス コヤマ」に似た企業風土は以前、私が勤めていた会社に似ているところがあるなと感じていました。

私は建築関係の営業をしています。建築、不動産関係もブラックな業界のイメージが強い人も多いと思いのですが…

私が勤めていた会社でも人間教育にかなり力を入れており、営業社員は始業の1時間前から出社し早朝訓練、毎月1回は休日を利用しての営業合宿、成績の悪い社員はさらに別の週に営業合宿…なんて事が当たり前のようにありました。「これは自己啓発であり、本来であれば本人がやるべき事を会社がお金と時間を負担してやっているのだ。」と言う上司もいました。

しかし、成績の良い社員には、家族を呼んでの表彰式や報奨旅行がありました。社員もこの表彰式を目指して日々努力するという風潮でこのあたりも似ていますね。 

半年に1回の表彰式に家族を連れて行くというモチベーションは確かにありましたが、普段は休みも少なく、家族との時間を犠牲にしてまで働いてました。その時間はもうかえってこない。妻と子供に寂しい思いをさせてしまった…今思えば、もっと家族との時間を大事にしておくべきだったと後悔しています。

話を「パティシエ エス コヤマ」に戻します。

数々の受賞歴のあるシェフが経営する有名洋菓子店ですから、代表の小山シェフに憧れて入社してくるパティシエも多いでしょう。

「パティシエ エス コヤマ」で働くということは小山シェフから直接指導が受けられ、パティシエとして他にはない修業になります。

そうした他にはない「やりがい」があるのも事実。

しかし、そうしたことから今回の件は一種の「やりがい搾取なのでは?」という印象を抱くという声もあります。

「やりがい搾取」とは、きちんとした労働環境が整備や生活が成り立つだけの賃金の支払いもされず、その代替物として職場の人間関係、一体感、達成感などといった、賃金以外の「やりがい」を与えて長時間労働や低賃金労働をごまかすことだという…

社員の中には過酷な労働環境でも、「小山シェフの下で働けるのだから」という気持ちだけで頑張っていた人もいると思います。

場合によっては「これは自分がパティシエとして成長する為の修行だから」と納得して長時間労働をしている社員もいたかもしれません。

将来は独立して自分の店を持ちたいと夢見ている社員もいたと思います。

しかし、その夢半ばで、過酷な長時間労働が原因で心身共に疲弊し、ボロボロになって辞めてしまうのであれば全く意味がありません。

小山シェフもやりがい搾取された修行時代があった⁉︎

小山シェフ自身もやりがい搾取があった環境のもとで修行していました。

小山シェフの父もケーキ職人だったそうですが、忙しくて家にはほとんどいなかったとの事。小山シェフは高校生になって父の店でアルバイトをした事がきっかけで菓子づくりの虜になり、いつしかケーキ職人を目指すようになりました。調理の専門学校を経て中堅の洋菓子メーカーに就職しています。

小山シェフはこの会社でみるみるうちに頭角を表し21歳にして店長を任されています。28歳の時に営業を任され、営業マンとしてフル稼働する傍ら、パティシエのコンクールには出ていいと会社に許可を取り、その結果、いくつもの賞に輝きTVチャンピオンからも出演依頼がありました。営業の仕事をこなしながらですから休みも少なかったのではないでしょうか?

会社からも高く評価されているにも関わらず、小山シェフが独立したのは、やはり給料が安かったからだといいます。

特にお子様が難病で治療費の捻出が大変だったとか…。生活費を稼ぐためにも独立したとの事。 

独立してからの活躍は周知の通りですが、小山シェフ自身の経験も、今回の長時間労働に繋がっている部分もあるのかもしれません。

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社員が行き過ぎた人材育成の犠牲にならないためにも…

小山シェフは自身の著書の中で、「自分は心配症だから充分に用意しておかないと不安で仕方ながない。人と同じ事をしていたら気が済まない。どんなことでも、他の人が1なら、僕はその倍をやろうと思った」と語っています。

その精神は素晴らしいとのですし、自身も相当な努力をされた事でしょう。

しかし、会社という組織の中では人材育成や教育も必要な中で、社員の健康や生活を守るというのも大切になってくるのではないでしょうか?

洋菓子店に限らず、飲食業界、その他職人の世界では「1人前になるまでが修行」という風潮の働き方、働かせ方が今もあります。

私が以前勤めていた会社も似たような風潮はありました。

「人づくり」という素晴らしい理念のもと経営されている会社も多い事でしょう。

ただ、それが行き過ぎた先には社員の夢も普通の生活もありません。

「パティシエ エス コヤマ」の「小山ロール」は本当に美味しいです。

しかし、どんなに美味しいものでも、今回の問題を受けて買いたいとは思わないという声もあると思います。

私個人としても、「小山ロール」を素直に美味しく食べれる日々が来る事を願います。

エス・コヤマは「今回の事態を厳粛に受け止め、労働環境の改善に向けて、今後も全力で取り組んで参る所存でございますので、引き続きご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。」とコメントしています。

今回の事態を受けて、今後、今尚、過酷な労働環境にある業界で労働環境の見直しについて検討される事を望みます。

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