阪神タイガースの矢野監督が衝撃の退任宣言。
それは阪神タイガースのキャンプイン前日の1月31日の出来事でした。
ミーティングにて百北球団社長もいる中、選手を前に、今シーズン限りで退任する事をいきなり発表しました。これから今シーズンが始まるというこのタイミングでの異例の退任宣言。
全国の阪神タイガースファン、いやプロ野球ファンの皆さんはびっくり仰天という感じなんじゃないでしょうか?
2022年、プロ野球も開幕。
しかし、阪神タイガースは開幕から続く連敗記録を更新してしまう事態となってしまいました。
なぜ、矢野監督はシーズン開幕前のタイミングで退任宣言をしたのか?
改めてその理由についてせまってみたいと思います。
矢野監督が語った退任理由
「俺の中で、今シーズンをもって監督は退任しようと思っている」
それはまさかの言葉でした。
その退任理由について矢野監督は次のように語っています。
「2月1日の1日というのも、もう帰ってこない1日。その1日も逆に退路を決める。『来年はもう監督という立場でここに来ていることはないんだな』という気持ちを持って自分も挑戦していきたい。それがチームのためにも選手のためにも、申し訳ないけど俺のためにもなるのかな、という決断で決めたことだった」
矢野監督はこれを言うことでマイナスに働く面もある事は承知の上で、それでも伝えたくてあえてこのタイミングで話をしたとの事。
誰にも時間は平等にあるが、永遠にある訳ではない。だから1日、1日を大事にしろと選手に伝えたかったという事なのか…?
矢野監督自身としては、「退路を断つ」という事なんでしょうか?
本人も相当な覚悟で話をされた事は想像出来ます。
ただ、このタイミングでの宣言はいかがなものか?
矢野監督の覚悟を聞いて「監督のためにも必ず優勝して監督を胴上げするんだ」という思いになった選手もいるとは思います。
しかし、逆に「これから今シーズン頑張るぞ」と気合いを入れて臨んだミーティングの場で、いきなり監督に今シーズンで辞めると言われて肩透かしをくらった選手もいたはず…
特に開幕1軍に残れるかどうかの当落選上の選手やレギュラーになれるか瀬戸際の選手は、このキャンプで監督に猛アピールしたいと思っていた事でしょう。
私個人としては「はたしてチームの士気が高まるのかどうか?」逆に心配してしまったのですが世間はどう考えているのでしょうか?
矢野監督の退任宣言に球界の反応は?
阪神タイガースの元球団社長、野崎勝義氏は「チームの戦意が高まるどころか逆効果になるのではないか」と心配していました。
それは自身の経験もあったとの事。
野村監督が奥様の沙知代さんの脱税疑惑もあってシーズン前に退任報道が出てしまった年のチームは最下位。
また、星野監督は健康問題もあって早い段階で辞任を決めていましたが、その意思を伝えてきたのはペナントレース終了後。その年、阪神は優勝して日本シリーズに進出しておりますが、星野監督の「チームの士気を落としてはいけない」という意志を汲んで日本シリーズ終了までは発表しないつもりでした。
しかし、情報が漏れてしまいスクープ記事が出そうになり、結局星野監督自ら日本シリーズ前に発表しました。結果、阪神は日本一を逃しました。
ですので、矢野監督に対して「当時、星野監督の発表は、選手を鼓舞する為に日本シリーズ前に辞任を発表したと思っているのであればそれは間違いだ」と語っています。
それだけ監督人事に関しては簡単に公表すべきではないという事なんですね。
ここで球界OBの声を拾ってみました。
【上田二郎氏】
いろんな憶測はできるが、シーズンがさあ始まるという前の日にこんなことがあり得るのかなと思ってしまう。真意が見えないから、なんとも言えない。3年間、いい成績を残している監督が辞める理由なんて何もない。
【黒田正宏氏】
キャンプの前日に『俺は辞めるから』と監督が言ったというのは聞いたことがない。ただただ驚いた。選手たちも動揺する。
【江本孟紀氏】
ここから戦いが始まるという日に、指揮官が「辞める」では、明らかに選手の士気に影響する。矢野はタブーを破ってしまったと言わざるをえない。今年に懸ける思いはわからないでもない。覚悟を固めて臨むことは、悪いことではない。それでも、退任する決意は胸に秘めて「思い切って、全精力を傾けて、勝つぞ」。そう告げれば済む話ではないか。
【広岡達郎氏】
今から大事なキャンプが始まる前に、今年でやめるなんて、意味がわからない。それなら今年も指揮をとらない方がいい。いまそんなことを言ったら、チームはガタガタになってしまう
【岡田彰布氏】
「ビックリどころではなかった。(今季)最後まで優勝争いをすればチームの士気も上がるかもしれないが、途中でもしBクラスまで(低迷し)バーっと行くと、チームがおかしくなってしまうのではないか」
引用元:東スポWEB
矢野監督のこのタイミングでの退任宣言に対して疑問を投げかけているOBが多いと感じられます。
まあ、当たり前といえばそうですが・・・
選手のモチベーション、チームとしての結束を考えるならば、このタイミングは確かにあり得ない・・・。私もそう思ってしまいます。
また、阪神は開幕後、連敗ワースト記録を更新してしまいました。
開幕後も矢野監督の退任宣言について疑問を投げかけているOBのコメントもあります。
【中畑清氏】
「矢野監督の発言『監督今年で辞めます』。あれがどうしても腑に落ちないんです。監督やっていて、辞めたい気持ちにはなりますよ。それをあえて開幕前に発言することが、何を意図して発言したのか。野球界ではありえない」
引用元:デイリー
【落合博満氏】
「私には考えられない会見の仕方です」
引用元:デイリー
一方、矢野監督の退任宣言に対し、擁護的なコメントをされているOBもいます。
【八木裕氏】
矢野監督らしいなと最初に感じました。キャンプ前日に、一年間の区切りをつけた。タイガースの監督をする宿命の中で、辞任、退任というものがつきまとうわけですから、そういう意味では、周りからの声を封じることができる。
【藤川球児氏】
「矢野監督をこの一年で失うことは阪神が、ものすごく大きな財産を失うということ。自分も含めたフロント、全ての部署なんですけど、矢野監督から吸収してね。最後の大勝負の一年なので」
引用元:スポーツ報知
八木裕さん、藤川球児さんのコメントは矢野監督の決断に対しては批判的なコメントではありませんでした。
藤川球児さんは「阪神の全員の選手のレベルが高い。12球団で一番。選手たちの成長を見れば、矢野監督がどれだけのものを残してこられたかは簡単に分かります。」と高く評価していました。
批判的なコメントに見える上田二郎さんも3年間、いい成績を残していると評価しているからこその言葉に思います。
そうなんです!
矢野監督は決して昨年の成績が悪かった訳ではないんです!
なんだかんだいっても、昨年セリーグ2位だったんですから!
矢野監督の退任は昨シーズンも話題になっていた!
矢野監督の退任の話は昨シーズンも話題になっていました。
2021年の阪神タイガースは、戦力も備わって何人もの解説者からも優勝候補にも挙げられていました。また、スーパールーキー佐藤輝明の活躍もあってチーム全体が活気づき、前半戦はぶっちぎりの首位でした。
まるで星野監督時代に優勝した時と同じイメージで、夏休みが終わる頃にはマジックが出て、このまま優勝しちゃうんじゃないかと私も夢見ていました。
しかし、オールスター戦以降の阪神タイガースは勝利のペースが失速してしまいます。そして東京ヤクルトスワローズがじわじわと阪神に迫ってきて、最後はゲーム差無しの僅差で優勝を逃す事に…
また、クライマックスシリーズではジャイアンツに下剋上をくらい敗退。
前半戦の勢いを考えたらまさかの結果になったのも事実。
特に後半戦に失速してきた頃の矢野監督の采配や選手起用に対する批判は日に日に強くなっていました。
特にシーズン後半、正捕手の梅野選手がベンチを温める事が多くなった時には、「梅野選手は矢野監督に嫌われているのではないか?」とか「梅野選手はFA宣言をして他球団に行ってしまうのではないか?」と、タイガースファンはヤキモキしていたことでしょう。
何を隠そう私も阪神タイガースファン。
今ごろ言うのかい!って感じですが…根っからのトラ吉です。
私もこの時は「梅野、頼むから残ってくれ!」と祈っていました。
そういう事もあって昨シーズンから矢野監督の後任探しの話題は絶えませんでした。
2位という結果ではありましたが、矢野監督も優勝を逃した責任は相当感じていたのではないでしょうか?
矢野監督の退任宣言の理由には球団人事が大きく影響した?
矢野監督の退任の理由のひとつとして、球団の人事も影響しているのではないかと考えられます。
実は、矢野監督は昨シーズンが終了した時点で球団に辞任の意向を伝えていました。
しかし、この時は藤原崇起オーナー兼球団社長と谷本修球団副社長が熱心に矢野監督を引き留め慰留しました。
その一番熱心に慰留してくれました藤原崇起氏が1月1日付けの人事で球団社長を外れ、谷本修球団副社長も4月1日付けの人事で本社のスポーツ・エンタテイメント事業本部長になり、オーナー代行に就任しますが現場からは外れるとの事。谷本副社長は矢野監督と今季もいっしょに力を合わせて戦う思いでこの人事異動にも抵抗していたようですが最後は願いが叶わなかったそうです。
矢野監督にとってこの2人の存在は大きく、また責任感の強い性格ですから自分を熱心に引き留めてくれた2人が現場からいなくなって、自分だけが残るという事にも心苦しいところがあったのではないかという意見もありました。
矢野監督自身は、「続投要請を昨年球団からしてもらった時に、自分の中で考える事も多くて、何がチームにとって一番良いのかと思った中でこの決断に至った」と語っています。
矢野監督の退任宣言の理由には自身の性格も影響した?
阪神 矢野監督 今季で退任の意向伝える チームミーティングで #nhk_news https://t.co/OZ3T72bHfr
— NHKニュース (@nhk_news) January 31, 2022
矢野監督はその甘いマスクと笑顔が素敵ですが、心の内ではとても熱い思いを持っています。
そして毎回、手を抜くことはせず、全力で取り組む姿勢には頭が下がります。
冒頭で「1日というのも、もう帰ってこない1日」という言葉がありましたように、毎日を全力で取り組んでいたのでしょう。
監督になってからも全力で監督業に取り組み、そして全力で選手と喜び、悔しさを分かち合う。
大逆転の試合後の監督インタビューでは声を詰まらせてしまった事もある…
チームの選手を守るためなら乱闘でも積極的に立ち向かう…
また、曲がった事が大嫌いだから不正を疑われれば感情的になり暴言を吐いてしまう事もある…
昨年のサイン盗み疑惑の時の暴言は頂けないですが…(笑)
矢野監督は熱い男です。
そして良くも悪くも真っ直ぐな性格の男です。
曲がった事が大嫌いなんでしょう。
だから「自分が辞めると決めている事を黙って、選手と今シーズンを戦うことはしたくはなかった」という思いもあったんじゃないでしょうか?
その後、矢野監督のインタビュー記事で答えられていたのがこちら。
「開幕前に退任を伝えたのは、チームのためになると判断したからです。一番良くないのは、自分が今シーズンで監督を辞めると決めていることをシーズン途中に選手が知ることだと考えました。自分自身が嘘をつけない性格なので、選手の立場だったら『最初から言ってくれよ』となります。正直な気持ちを伝えないのは選手を裏切っている気がしました」
引用元:full-count
矢野監督は選手と一緒に喜び、一緒になって悔しがる人。
かつてノムさんこと野村克也監督は、矢野監督に対し「監督が選手と一緒になって感情を爆発させるのはやめた方がいいんじゃないか?」といったような事をテレビの対談企画で話されていたのを何となく覚えています。
それでも矢野監督は選手と一緒に喜び、泣き、時には怒りの感情も露わにしています。
それが矢野監督です。
選手と同じ思いを持って戦いたかった。
彼の真っ直ぐな性格が退任宣言を早めた理由の大きな要因であったのは間違いありません。
最後に…
今回、シーズン前に退任を宣言するという異例の行動をした矢野監督ですが、裏を返せば今シーズンにかける思いが尋常ではないという証拠でもあります。
矢野監督のこのタイミングでの退任宣言については様々な意見があるでしょう。
開幕は最悪の連敗記録更新してのスタート。
世間では「解任」や「休養」という言葉もちらほら見られます。
しかし、矢野監督にはこの声を気にせずに自分の思うように後悔のないシーズンを送ってほしいと思います!
まだシーズンは始まったばかり。
采配に対して批判が出ようが関係ない!自身の判断を信じてやってもらいたい!
そのかわり矢野監督…
阪神タイガースファンに、今シーズンの終わりには歓喜の「六甲おろし」を歌わせてくださいね!